最近は、歯に対する意識が向上したこともあり、「定期的に受診」「冷たい物がしみる」などで早期に歯科医院を訪れる人が増えました。しかし、相変わらず「痛くなって」「がまんできずに」受診する方も多いようです。
そうなると「むし歯が大きく、詰めるだけでは治りません。『神経』を取りましょう」ということになりかねません。麻酔をし、神経をとって「では来週」と予約をとって帰るという経験をした方もいらっしゃるでしょう。そして、二、三日して痛みを感じなくなると、予約は気になるものの、仕事の忙しさにまけて歯科医院から遠のいてしまう。
「歯科医院での治療は、何回も通わなければならないので大変。なぜ一度に時 間をかけて、早く治療を終わらせてくれないのだろう?」このような疑問をお持ちの方は、意外と多いようです。 虫歯の場合、軽いものであれば一日で治療を終了することもあります。しかし、虫歯が進んでいるほど治療に時間がかかってしまいます。
しかし皆さん、神経を取ってそのままにしておくのは、とても危険なのです。神経を取ったあとは人工物で密封しなければなりません。そのままにしておくと、神経のあった空間にバイ菌が入り込み、歯の根の部分にウミがたまってしまいます。そうなると歯を抜かざるを得なくなることが多いのです。
また、歯形をとって金属やプラスチックで被(かぶ)せ物などを作り、次回いよいよ装着、という段階で中断してしまう人もいます。間に合わせの仮歯(かりば)で、「これでいいや」と思ってしまうのでしょう。でも、ピッタリ合わせて作った物とは違い、あくまでも仮の歯に過ぎません。歯との段差があるためにバイ菌が入ってむし歯になりやすく、予後が心配です。
しかし治療途中ですから、歯には歯根と交通するための穴が開きっぱなしですし、いくら蓋がしてあっても仮詰めですから、長時間経つと隙間が広くなり、そこから新たにばい菌が入り込み、治療前よりももっと深刻な状態になってしまうこともあります。
また治療途中では、綿栓(抗生剤のついた細長い綿)を根管の中に入れておきますが、抗生剤の効果はせいぜい2~3日なので、治療を中断して長期間放置すると、綿栓は逆にばい菌の温床となってしまうのです。
歯の表面は硬いエナメル質で覆われ、その内側に象牙質、さらに内側に神経と呼ばれる歯髄(しずい)があります。歯髄は細かい神経組織と血管からなるもので、歯に栄養を与え、痛みを感じるのもこの部分です。
このような役割のある神経を取ってしまった歯は、十分な栄養が与えられないためにもろくなり、強い力で噛むと折れてしまうことがあります。また、その歯の別の部分がむし歯になっても、神経がないので痛みを感じることがなく、手遅れになってしまう可能性が高くなります。むし歯になってしまったのは仕方ないにしても、神経を取ったままにしたり、仮歯のままで生活を続けるのは絶対にやめ、最後まで治療を終わらせましょう。
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