ココアに含まれる天然由来の成分にこだわったハミガキペースト、ココラル・インターナショナルの『ココデント』が人気を呼んでいる。開発したのは光通信の研究者。科学こそが世界を変える、と信じてきた男が魅了された自然の力とは――。
インターネットも携帯電話も一般には普及していなかった1980年代。大学生だった石田進(ココラル・インターナショナル代表取締役会長:51歳)は、パソコンを利用したネットワークに興味を抱いていた。大学院を出ると26歳で起業し、光を応用した通信工学の研究に没頭した。
今では当たり前となっているクレジットカードで手軽に航空券を予約・発券するシステムは石田の成果のひとつだ。光通信を中心とした科学の発展なしに、経済の発展はない――と信じて疑わなかった。
2000年、科学研究漬けの生活を送っていた石田に転機が訪れた。鶴見大学歯学部の副学長から、光ファイバーで口の中の細菌を制御し、虫歯予防に応用することはできないか、との相談が持ち込まれたのだ。
光には殺菌効果がある。痛みもなく、安全性も高いといわれていた。しかし、光を応用した科学と微生物学のコラボレーションは未知数だった。並の人間なら即座に固辞していたかもしれない。だが石田は違った。
「私にとって諦めることは最低の敗北。成功する自信がないからと二の足を踏むのはいやでした」
石田はそれまでのキャリアをなげうって、同大学の口腔微生物学講座の研究員を引き受けることになった。石田の研究は口の中の微生物について学ぶことからスタートした。微生物や細菌についての知識はほとんどなかった。何とか自力で学ぼうと様々な文献を読みあさった。大学の研究者にも教えを請うた。加えて、口腔感染症の仕組みを知るために基礎研究を繰り返した。
やがて地道な研究の成果が現われた。ワインなどに含まれるポリフェノールに、歯周病を抑える効果があるということがわかった。その成果はいかほどか? ポリフェノールを多く含む天然由来の成分を10種ほど集め、比較すると、ココアをパウダー状にした抽出物に有意に高い抗菌作用があることがわかった。ココアには歯周病を引き起こすジンジバリス菌に対し、抗菌効果があったのだ。
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