むし歯を治したり、歯髄炎の処置をした歯が、ずっと後になってから食物を噛むと痛むとか、歯が浮いた感じがするといった症状が出てくることがあります。深いむし歯の処置では、その時には歯髄(しずい:神経)をとらずに治していても、すでにその時点で象牙質が口腔内の細菌に感染して、後になって歯髄が自然死していることがあります。あるいは、歯髄炎の処置として歯髄をとってしまっていても、歯髄を入れていた歯の内部の空間(歯髄腔、根管)の形態が複雑なために、徹底的に歯髄除去ができず、一部の感染した歯髄が残ってしまうことがあります。これらの場合には、死んだ歯髄(歯髄壊死〈えし〉、歯髄壊疽〈えそ〉)が異物となって、歯の根の先の穴(根尖孔、根端孔〈こんたんこう〉)から歯の外へ出て、歯根膜や歯槽骨に炎症性の病変を起こすのです。
歯髄炎、歯根膜炎ともさまざまな病態があるので、その区別とともに現在どのような状態であるのかを正しく調べる必要があります。必要な検査として、まず現在の症状になるまでの詳しい既往の問診、視診、打診、触診、温度診、X線診などは、ほとんどすべて行う必要があります。さらに、歯髄の生活力の有無を調べるために電気診(でんきしん)(歯に微量な電流を与えて反応を調べる検査)が行われます。
歯科治療における最も難易度の高い処置である根管治療は日本の保険制度では重きをおかれていませんが、それにも起因する日常的な不快症状の再発は、失活歯に痛みがあれば、歯根破折を疑うか再治療という考えを当然視させてしまっています。 根管治療に問題は考えられないから、それ以外の原因を探ろうというわけにはなかなかいかないのが現状です。 本質的な問題を追及し確定診断をするには整理された情報が必要ですが、診断に一番関わることに曖昧性があっては、ものごとを峻別し問題点を抉り出すようなポジティブな分析ができません。
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