人間はおよそ人生の3分の1を眠って過ごすといわれます。大体の方にとっては睡眠は当たり前の出来事で、夢を見るのも当たり前のことでしょう。しかし現在、日本人の4人に1人が十分な睡眠による休養を取れていない状態と言われています。
偶然にも慢性頭痛と同じような割合です。睡眠障害の一番の問題点は、本人もあまり睡眠の重要性に気付いておらず、睡眠障害があっても、単に日中眠気がさすだけとか、忙しくて疲れているだけ、或いは年令のせいで、などと自己流の解釈をしてそのままにしてしまう場合が圧倒的に多い、ということです。しかし最近では睡眠障害が社会や人間個人に及ぼす重要な影響について、健康医学のみならず経済や政治の種々の分野からも注目を浴びています。
身体は休息状態なのに、脳は覚醒に近い状態で活動している睡眠のことをレム睡眠といいます。「カラダの眠り」と考えるとわかりやすいでしょう。こうした睡眠状態においては、顔の筋肉が軽く痙攣したり、眼球が非常に速くグルグルと回り、それは閉じたまぶたの上からも確認することができます。この特徴的な速い眼球の動きの頭文字をとって、REM(レム)睡眠といいます。眼球が動くということは、脳が活動している証拠です。
人間は深い睡眠に入ると痛みを感じないように出来ています。しかし睡眠障害により、慢性の痛みや、気分障害などが起こってくることも知られています。痛みと睡眠障害を結びつけるものは、脳内のいろいろな神経伝達物質だったり、ホルモンの変化、体内時計や日内リズムの変化、以前の恐ろしい記憶だったりします。実際、痛みと睡眠障害は切っても切れない関係にあります。
多くの慢性痛が睡眠障害を伴ってきます。慢性痛の検査で睡眠脳波などに特有の異常が出ていることが知られています。慢性痛の人は寝ようにも十分眠られなくなっています。それが痛みの閾値(痛いと感じる刺激の強さ)を下げて、少しの刺激で痛みを感じる状態にしています。気分の障害も睡眠が十分とれないことと関係しますので、逆に睡眠を十分とれるようにすれば、痛みがかなり軽くなることが知られています。
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