コルチコトミー矯正はインプラント矯正より手技が難しく、矯正・歯周・口腔外科の三分野にわたる技術です。これは手術の際には、三人の専門医が必要になるということですが、専門医が増えると、相互の連携がスムーズにいかず、また治療結果に対する責任の所在も不明確になりがちです。
したがって、治療結果を単なる「グッド」ではなく「エクセレント=優良」にするには、一人の歯科医がすべてを勉強して行わなければ不可能ですが、なかなかそういう専門医はいないのが現実なのです。
コルチコトミーの概略を述べてきましたが、ここからは私が行っている「深沢法」(へミオステオトミー+インプラント)についてふれていきます。
寿谷先生が全体矯正にコルチコトミーを導入してから30年、コルチコトミーも進化・発展してきました。その大きな流れは二つあります。一つは、アメリカで今盛んに行われているAO Oという手法。これは、歯槽骨表面に骨補填材をふりかけるという物理療法を、従来のコルチコトミーに加えるものです。
この手法の狙いは、速 いだけでなくもっと骨を丈夫にしようという発想です。一見よさそうに思えますが、ふりかける骨補填剤は牛や人の骨です。正常な骨になぜ牛や人の骨をふりかけなければならないのか私には疑問ですが、世界的にもこの手法はあまり受け入れられていません。
もう一つは、私が行っている「深沢法」です。これは、基本的には寿谷先生のコルチコトミー を発展させ、へミオステオトミーとインプラン トアンカーを併用し、すべての症例に適用できるようにしたものです。やり方は国内ではまだ非公開ですが、海外ではすでに公表しています。
AOO も含めて、これまでのコルチコトミーにはいくつかの問題点がありました。最大の難点は、すべての症例に適応できるわけではないことです。歯を抜かない非抜歯矯正にしか、治療期間を短縮できないのです。けれども非抜歯だと、症例によっては上唇が前に出たままのことがあります。歯はきれいに並んでも口元は突出したまま、ということになりかねないのです。
非抜歯の代償として口元が出たままでもいいというなら別ですが、けっして審美的に満足のいく治療とはいえません。きれいに歯が並んで、口元のラインも整っている。それが理想ですが、そのためには、抜歯が必要となるケースもあるのです。
深沢法は、非抜歯はもちろんですが、抜歯が必要なケースにも適応できるように改良した治療法です。つまりどんな症例にも、適応できるのです。これはおそらく、世界でも私だけが行える手法だと思います。を切りますから、歯肉が腫れることはありません。従来の手術法が腫れるのは、大きく歯肉を開くからです。