骨粗しょう症などで「ビスフォスフォネート(BP)剤」の投与を受けた患者で、抜歯などの歯科治療後にあごの骨が壊死するケースが報告されている。海外では作用の強い注射薬での発生が大半だが、日本では経口薬での割合も高い。服用者が歯科診療を受けられないなどの問題も起きたことから、関係学会は合同で予防や対応に関する見解を作成。BP剤の休薬を検討すべきケースなどを挙げ、医療関係者の連携を訴えている。
2007年1月中旬以降、ビスホスホネート(BP)系薬剤を製造・販売する製薬会社から、歯科処置に関連した顎骨壊死・顎骨骨髄炎の副作用に関する注意喚起文書が、医療機関や薬局に配布されている。これに先立つ2006年10月には、厚生労働省医薬食品局安全対策課が製薬企業に添付文書の改訂を指示しており、各BP系薬剤の添付文書には、顎骨壊死に関する注意が追記されている。
BP系薬剤では、従来から主な副作用として消化器症状(経口剤)や発熱(注射剤)が知られていたが、近年、BP系薬剤投与との関連性が疑われる重篤な顎骨壊死・顎骨骨髄炎が報告されている。これらの副作用症例の多くは、抜歯などの侵襲的歯科処置や局所感染に関連して発現しており、抜歯した場合にはその部位の付近で発現することが明らかになっている。
このことから、配布されている文書および添付文書では、歯科または口腔外科で治療する際の注意点として、(1)歯科処置の前にBP系薬剤が投与されていないかを確認すること、(2)投与している場合には、侵襲的歯科処置をできるだけ避けるか、患者の状態とリスク因子を十分考慮し判断すること、(3)口腔内を清潔に保つように指導すること――などが記載されている。
BP系薬剤は、長期の臨床試験で骨粗鬆症に対する有用性が認められており、現在国内外の骨粗鬆症ガイドラインでは第1選択薬として位置付けられている。また、癌領域においても、悪性腫瘍における高カルシウム血症や固形癌の骨転移、多発性骨髄炎などで有用性が認められ、ガイドライン上では癌の支持療法薬として積極的な使用が推奨される薬剤でもある。このほかにも、骨パジェット病、小児骨形成不全といった骨代謝異常疾患でも有用性が報告されている。
BP剤投与中の患者が抜歯などの治療を受ける際の対応について、科学的根拠には不十分な点もあるとした上で、現時点での見解を作成した。見解は、歯垢や歯石の除去など清掃で口内細菌を減らすことが最も重要だと強調。その上で、BP剤を注射薬で使うがん患者の場合は原則として投与を中断せず、抜歯などの「侵襲的治療」をできるだけ避けるとした。