唾液腺や涙腺を代表とする外分泌腺の障害により、口腔や眼球の乾燥症状を特徴とする自己免疫性疾患です。外分泌腺とは、インスリンや成長ホルモンなどを出す内分泌腺と比較されるもので、文字通り体の外へ体液を排出する器官といえます。中年女性に圧倒的に多く発症し、関節リウマチや他の膠原病に伴って生じる場合と、そのような合併疾患を認めない場合の2種類が存在します。
シェーグレン症候群は中高年女性に多く見られる病気で、目や口が乾くなどの症状が出る。免疫細胞が自身を攻撃する自己免疫疾患とされている。「これらの症状は、関節リウマチや膠原病で見られることもあるので、専門医の受診を勧めます」と馬事公苑クリニック(東京都)の橋本博史院長は話す。
免疫は通常、外敵に対して働き、これらを排除するために我々に備わっている防御機構ですが、自己免疫疾患の場合には自己の身体の成分を排除するように働くため、病気を発症させます
。免疫は細胞性免疫と液性免疫とよばれる2種類がありますが、シェーグレン症候群でも、唾液腺や涙腺にTリンパ球やBリンパ球とよばれる細胞性免疫成分が浸潤し、これにより腺細胞が障害を受け、その機能が低下します。また、自己抗体と呼ばれる液性免疫成分の異常も認められます。
「涙腺や唾液腺などに異常が起きたときに反応する免疫担当細胞があるのですが、そうした細胞が涙腺や唾液腺の組織を攻撃していると思われます」と橋本院長。こうしたことから、自己免疫疾患とみられている。
涙の分泌が少なくなると、眼球の角膜や結膜が傷つきやすくなる。目がごろごろし、明るい所だとまぶしく感じる。また、目やにが出る、目がかゆい、目が疲れるなどして生活に支障を来す。口の中が乾くと、乾いた食べ物は食べづらくなり、水分を含んだ食べ物を好み、お茶や水を頻繁に飲むようにもなる。唾液には口の中の細菌を攻撃して歯を守る役目もあるが、口の中が乾いて荒れると感染症にかかりやすくなって虫歯も増える。
治療では、涙や唾液の分泌を促進させる薬を内服する。また、人工唾液を口の中に噴霧する方法もある。目には専用の点眼薬を用いる。この病気は、根気よく治療を続ける必要がある。「虫歯が増えるので日ごろから歯磨きを励行し、口の中を常に清潔に保つように心掛けることが大切です」。似たような症状は関節リウマチや糖尿病、副甲状腺疾患、ある種の薬の服用などでも起こるので、専門医を訪ねて他の病気によるものなのかどうか鑑別診断を受けることも必要だ。