従来のナイシンAは低純度で不純物・塩分が多く、味への影響が懸念されるため、口腔用途には適していなかった。しかし、新分離精製技術を採用することにより、ナイシンAの高純度化を実現し、「ネオナイシン」に使用されたのである。
また、さまざまな天然物質の中から選定した梅エキスは、微量では抗菌効果を示さないが、ナイシンAと組み合わせることにより、ナイシンAがグラム陰性菌に対して抗菌効果を示すようになるという仕組みだ。この独自の配合比により、ナイシンAの抗菌活性の補完と味への影響の少ない口腔用天然抗菌剤を共に実現した次第だ。
ネオナイシンの特徴をまとめると、(1)虫歯菌および歯周病菌に対する優れた抗菌性(孔を形成し殺菌)、(2)天然由来としての高い安全性、(3)優れた生分解性を有し、分解後は安全なアミノ酸(環境・ヒトに優しい)、(4)独自の配合により、味への影響が少ない(口腔用途に最適)となる。
ネオナイシンの口腔内細菌に対する有効試験では、口腔微生物学研究で知られる鹿児島大の小松澤均教授、同・松尾美樹助教、高齢者の口腔感染症で知られる国立長寿医療研究センターの松下部長らの協力により試験が進められた結果、虫歯原因菌である「ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)」と歯周病原因菌である「アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)」の口腔内病原菌に対して、抗菌効果が認められた。
ネオナイシンは、口腔内病原菌を減少させる製剤として、誤飲で摂取した場合でも体内消化酵素で速やかに分解され安心である点に大きな優位性を持つ。これは、環境中に排出された場合も同様で、土壌中でアミノ酸にまで生分解されるため、生物生態系の1つの栄養物質として循環し、環境に調和した優しい抗菌剤といえるというわけだ。
このネオナイシンを用いた、高齢者・重度心身障がい者のための口腔ケア製品は、2013年に発売が予定されている。
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