歯茎にかくれた歯周ポケットの中のプラークは、歯周ポケットの壁(歯の根)にくっついているプラークと、歯周ポケットのなかにたまっているプラークに分けて考えることができます。くっついているプラークは鏡で見えるプラークとその組成が似ています。このプラークは歯肉溝液に含まれるミネラルを取り込み、歯石をつくります。
歯周ポケットのなかの見えないところにも歯石はできているのです。この歯石は目に見える歯石とちがって、毒素をたくさん含んでいます。歯の根の表面は、からだのなかのたえずつくりがわっている細胞に富んだ骨と同じ組織ですから、時間がたつと根の表面 にくっついた歯石は、根の表面と入り組んで成長します。歯茎の上のめに見える歯石は、じつは、それほど害はないのです。問題は、このかくれた歯石です。
歯の根にくっついていない歯周ポケットにたまっているほうのプラークは、ほとんどグラム陰性の、しかも酸素がないところでしか育たない菌です。そこには、らせん菌やスピロヘータという、活発に自分で動く細菌も含まれています。虫歯の細菌には虫のように動く細菌はいませんが、歯周ポケットのなかの細菌は虫のように動く細菌が多いのです。この歯周ポケットにたまったプラークが、歯周炎に直接かかわっています。
歯周炎の患者さんの歯茎の溝のなかにいる細菌は、歯肉炎だけの患者さんではあまり見つからない酸素の嫌いな細菌やスピロヘータが大勢を占めているのです。このうち、自分で動きまわる細菌は、炎症を起こしている歯肉のなかに直接入り込むこともあります。
プラークとひとまとめにしていますが、歯肉にかくれたプラークの毒性は歯肉の外の目に見えるプラークの、ざっと六〇倍にもなります。歯周炎の原因菌は、この歯周ポケットのなかのプラークなのです。