義歯を入れてから食べ物の味が変わったとか、食事が美味しくないという訴えは昔からありました。普段、人々が味という場合には、味蕾(みらい:味を感じる細胞)で感じる甘い、辛い、しょっぱい、苦い、酸っぱいといった味覚だけではなく、匂い、温度、口ざわり、歯ざわり、歯ごたえ、形状、大きさなどの総合的な判断をしています。口腔内カメラでよく検査しましょう。したがって、部分義歯や総義歯を口に入れることによって、それらの総合的情報がいかに伝わりにくくなったかが問われるわけですが、味蕾味覚に関する生理的な研究はあっても、残念ながら義歯を入れている人の科学的、総合的な研究は少ないようです。
亜鉛はいくつかの酵素の働きに不可欠な元素です.亜鉛の必要量はごくわずかですが,不足すると味覚障害や嗅覚障害が生じます味覚障害は人口の高齢化,亜鉛キレート作用(ミネラルを包み込む作用)の強いポリリン酸やフィチン酸が繁用されている加工食品への増加,偏食,ダイエットなどによって増加しています。
最も多い原因は薬剤性と食事性の亜鉛欠乏症です.ほかに原因不明の特発性味覚障害,内科的な全身疾患が原因と思われる味覚障害などがあります.。薬剤性亜鉛代謝障害では微量にしかない亜鉛が薬物の「キレート作用」により体外へ捨てられるのために亜鉛欠乏症が生じます。
特に高齢者では亜鉛キレート作用を持つ薬剤(降圧薬,脳循環改善薬,抗腫瘍薬,抗うつ薬など)による亜鉛欠乏症に気をつける必要があります。舌炎や口内乾燥,糖尿病,肝疾患,腎疾患,消化器疾患,胃切除手術後の貧血なども味覚障害の原因となります。味覚障害の原因は明らかになっていないが、次のような要因によって起こると考えられている。
まず、舌や上あごに分布する味蕾という味を感知するセンサーや味蕾に分布する神経が抗がん剤によりダメージを受けると、味覚に異常が起こる。
また、味は唾液を介して感じるため、唾液腺がダメージを受け、唾液が減ると感度が低下する。さらに考えられる要因としては、抗がん剤によって亜あ えん鉛の吸収が妨さまたげられ、亜鉛不足になることだという。
「亜鉛は味蕾の再生を促すといわれています。亜鉛が不足すると抗がん剤でダメージを受けた味蕾の再生が遅くなり、味覚障害が起こりやすくなるというわけです。亜鉛はサプリメントで摂取するのも1つの方法です。超音波スケーラーで口腔内の清潔を守ることは大事です。ちなみに経験的なことですが、抗がん剤治療中に亜鉛製剤や亜鉛サプリメントを飲むと、食欲が増す患者さんもおられます」免疫力を高める:亜鉛は免疫反応を活性化させ、不足すると感染症などにかかりやすくなります。また活性酸素を除去する酵素を助けます。
環境汚染などによる有害重金属(鉛や水銀など)の毒性を弱めてくれます。亜鉛不足で女性ホルモンの働きが低下し、月経周期の乱れ、卵子の発育など妊娠機能にも作用します。また男性の場合も、前立腺に多く存在する亜鉛は、活発な精子づくりを促します。
他にも、コレステロールの沈着を低下する、アルコールの分解酵素に関わり悪酔いを防止する、糖質の代謝、インスリンの合成などにも関係しています。