アメリカ、カリフォルニア州ペタルマで開かれる毎年恒例の「世界で最も醜い犬コンテスト」。この10年はチャイニーズ・クレステッドが優勝をほぼ独占しているが、今年も例外ではなかった。
6月22日に発表された2012年度王者は、イギリスから参加した8歳の「マグリー」。つぶらな目をした無毛のチャイニーズ・クレステッドで、不揃いの白いヒゲがデンタルフロスを連想させる。
犬の遺伝学の権威であるアメリカ、コーネル大学の生物学者アダム・ボイコ氏は、「特徴的な無毛の体が醜さの原因」と指摘する。
「例えば、頭髪のない人ばかり見ていると、突然ほくろやシミに気付き始める。それまで目立たなかった欠点が急に気になってくるのだ」。マグリーの場合は、シワシワでシミだらけの皮膚がとにかく目立つ。
チャイニーズ・クレステッドやメキシカン・ヘアレス、ペルービアン・ヘアレスなどのヘアレス犬種は、品種改良で誕生した。
「おそらく、大昔に1度だけ突然変異で生まれたのだろう。それを好んだブリーダーが繁殖させたんだと思う。野生のヘアレス犬が群れで走り回っている姿など、誰も見たことがない」とボイコ氏は言う。
アメリカのマクローリン研究所(McLaughlin Research Institute)で犬の品種を研究する遺伝学者テレサ・グン(Teresa Gunn)氏も同意見で、「自然に進化した犬種ではなく、品種改良の産物だ」と指摘する。
「かわいい小型犬を好む人は多い。では、ヘアレス犬を飼う理由は何だろう? 毛が抜け落ちない、家が暑い地域にある、もしくは単純に奇妙さがウケているのかもしれない」。
体毛が無いことは、犬にどのような影響があるのだろう。
「利点についてはよくわからない。夏を過ごしやすいのかもしれないが、過度な日焼けの危険もある。ペルーのヘアレス犬は決まってセーターを着ているが、脱ぐと日焼け跡がくっきり見える」とボイコ氏。
今のところ、確認できるメリットは「醜い犬コンテストで勝てる」ことくらいかもしれない。