唇裂・口蓋裂には、歯ぐきに割れ目をともなうことがあります。唇顎裂(唇~歯ぐきまで割れている型)、唇顎口蓋裂(唇~のどちんこまで割れている型)などがこれに当てはまります。顎裂の部分では歯ぐきから鼻のつけ根にかけて骨が無いため、さまざまな問題が出てきます。
まず、歯が生えるためのスペースが少ないため、歯並びが悪くなります。また、上あごの成長が悪く、いわゆる「受け口」と呼ばれる咬み合わせになることもあります。こういった問題を解決するために、現在では顎裂に骨移植をおこなう治療法が一般的になっています。
顎裂骨移植は歯ぐきの粘膜を切開して、患者さん自身の骨を移植します。骨は腸骨(腰の骨の一部)をつかう場合が最も多く、腰のところを数センチ切開して骨をとります。そのほかに下あごや頭の骨、肋骨を使う場合や、病院によっては部分的に人工の骨をつかうこともあります。いずれの場合にせよ、骨をとった部分には変形や運動障害などの後遺症がのこらないよう、十分に注意する必要があります。
顎裂骨移植のおもな目的は歯並びの改善ですので、矯正歯科の先生と協力しておこなう必要があります。矯正歯科治療と顎裂骨移植は一連の治療と考えてください。早い場合は4歳ころから矯正歯科治療を始め、顎裂骨移植にむけて準備をします。
手術は8歳から10歳ころ、すなわち、乳歯から永久歯に生えかわる時期におこなうのが一般的です。しかし、患者さんの顎裂の程度や歯並びの状態によっては、これよりも早い時期、あるいは遅い時期におこなうこともありますので、主治医の先生および矯正歯科の先生と十分に相談して下さい。
手術後は、矯正歯科治療によって永久歯の歯並びを整えます。矯正歯科治療は、あごの骨の成長が終わる高校生ころまでつづける場合もあります。また、唇裂・口蓋裂の患者さんの中には一部の永久歯が欠けていたり、小さいことがあります。この場合には、部分的な入れ歯(インプラントなど)を使うこともあります。