よく噛むことは、単に食べものを体に取り入れるためだけではなく、全身を活性化させるのにたいへん重要な働きをしているのです。この噛む効用について、学校食事研究会がわかりやすい標語を作りました。「ひみこの歯がいーぜ」です。
弥生時代の人は現代人に比べて、噛む回数が何倍も多かったと考えられていますから、卑弥呼(邪馬台国の女王)だって、きっとしっかりよく噛んで食べていたのではないでしょうか。
美食飽食という言葉で形容される現代人の豊かな食生活。しかし、軟食化が進み、糖分の多い加工食品の普及、加熱調理法の進歩などで現代人の噛む回数は大幅に減ったといわれています。ずっと時間をさかのぼり、卑弥呼のいた時代(弥生時代)は、食事一回分の噛む回数は平均3,990回で、時間も50分かけていたと言われています。
源頼朝の時代では平均2654回、徳川家康の時代では平均1465回、それに比べ我々現代人の噛む回数は620回、時間もたったの10分しかかけていません。卑弥呼の時代のひとたちは良い歯や歯ぐきをしていたと考えられており、『ひ・み・こ・の・は・が・い~・ぜ』という標語であらわされるように、「かむこと」には8つの効果があるといわれています。その内容については、今後解説していきます。普段からかみごたえのある食材選びや調理法に工夫して、一生丈夫で歯でよくかむ食生活をたいせつにしましょう。
よく噛むと脳にある満腹中枢が働いて、私たちは満腹を感じます。よく噛まずに早く食べると、満腹中枢が働く前に食べ過ぎてしまい、その結果太ります。よく噛むことこそダイエットの基本です。
よく噛むと、食べもの本来の味がわかります。人は濃い味にはすぐに慣れてしまいます。
できるだけ薄味にし、よく噛んで食材そのものの持ち味を味わうよう、心がけましょう。歯並びがよく、口をはっきり開けて話すと、きれいな発音ができます。
よく噛むことは、口のまわりの筋肉を使いますから、表情がとても豊かになります。 元気な顔、若々しい笑顔は、あなたのかけがえのない財産です。
よく噛む運動は脳細胞の動きを活発化します。あごを開けたり閉じたりすることで、 脳に酸素と栄養を送り、活性化するのです。子どもの知育を助け、 高齢者は認知症の予防に大いに役立ちます。
よく噛むと唾液がたくさん出て、口の中をきれいにします。この唾液の働きが、 虫歯になりかかった歯の表面をもとに戻したり、細菌感染を防いだりして、 虫歯や歯周病を防ぐのです。唾液に含まれる酵素には、発がん物質の発がん作用を消す働きがあるといわれ、
それには食物を30秒以上唾液に浸すのが効果的なのだとか。「ひと口で30回以上噛みましょう」 とよく言いますが、よく噛むことで、がんも防げるのです。
「歯丈夫、胃丈夫、大丈夫」と言われるように、よく噛むと消化酵素がたくさん出ますが、食べものがきちんと咀嚼されないと、胃腸障害や栄養の偏りの原因となりがちです。偏食なく、 なんでも食べることが、生活習慣病予防にはいちばんです。「ここ一番」力が必要なとき、ぐっと力を入れて噛みしめたいときに、 丈夫な歯がなければ力が出ません。よく噛んで歯を食いしばることで、力がわき、 日常生活への自信も生まれます。