歯の噛み合わせは、病気と大きな関連性があります。歯医者は、漠然と以前から 『健康にとって歯は大事だから大切にしましょう!』と、患者さんに訴えてきました。
現代日本人の生活習慣と食生活は、人の体にさまざまな影響を及ぼしています。「姿勢が悪くなった」といわれることもそのなかの一つでしょう。そして、からだの器官は、お互い密接に関連しているので、姿勢の変化は、歯や顎にも少なからぬ影響があります。
椅子に座って食事をされる方も多いと思いますが、足を組む、足のつかない椅子に座る、ゆったりとした椅子に深く腰掛ける、などはあまりいい姿勢とはいえません。椅子を使わないときでも、あぐらをかいて座ると猫背気味になります。このような姿勢では顎が動かしにくく、噛む力が弱まります。
高い椅子に座っているお子さんに、座ったとき足がつくよう踏み台などをおいたところ、噛む力、噛む面積、噛む回数が2割近くアップしたという調査データもあります。顎の筋肉をフルに使う咀嚼運動を十分に行うには、背筋と首をまっすぐ伸ばして、腰骨を立たせ、頭部や上半身をしっかり支える正しい姿勢であることが必要です。
しかし現代人は、正しい姿勢をある程度の時間保つための筋肉(インナーーマッスルなどと呼ばれている)が弱いことが多く、下あごが出たり、左右どちらかに寄りかかったり、首が傾いたりといった姿勢になってしまいます。
その結果、口や顎にも影響が出ます。十分に噛めないで、顎の骨や筋肉が発達しないと、歯が正しく収まりきれず、歯並びや噛み合わせが悪くなります。歯並びが悪いことから磨き残しが多くなり、むし歯や歯周病のリスクも増えますし、顎自体に痛みが出たり、カクカク音が出たり、いわゆる顎関節症となってしまうこともあります。生活習慣と食生活と書きましたが、どのようなことが考えられるでしょうか。一つは、ファーストフードを代表とするやわらかい食べ物が好まれるようになったことがあげられるでしょう。あまり噛まなくても消化できるので、顎の発達は悪くなりますし、少しくらい姿勢が悪くても食べにくいということもありません。
また、交通機関の発達や、子供の遊びの多様化などで、歩くことや外で遊ぶ機会が減ったことも影響があるでしょう。前述のインナーマッスルや顎の発達にはたくさん歩くことや運動も重要なのです。
さらに、イスやソファーの生活が増えたことも一つかもしれません。イスやソファーが悪いというのではなく、使い出してからの歴史が浅いせいもあって、デザインやすわり心地ばかり重視され、正しい姿勢で座ることへの意識がまだまだ少ないのではないでしょうか。座る姿勢が正しくなるよう考えられたイスなどももっと増えてきてほしいものです。子供はもちろん、大人にとっても正しい姿勢は、全身の健康につながります。次回も姿勢について書いていきます。
上・下の前歯は腰から下の疾患に関係する。上・下の大臼歯(奥歯)は背中・胸部を含め上半身の疾患、(頭、目、耳、鼻、腕、首、肩、手)に関係する。上・下の第1、第2小臼歯は内臓の疾患(肺、心臓、胃、すい臓、大腸、小腸、胆のう、肝臓)に関係する。
さらに、第1小臼歯が早く噛み合うと心臓疾患に影響し、第2小臼歯は噛み合わせが悪いと精神的、神経的な不定愁訴疾患が現れることが多い等、歯と病気とは密接な相互関係があることが理解されて、東洋医学や整体関係者は治療に当たっているのです。私自身、腰や肩の具合が悪く、整体治療を受け、この十年勉強させていただき、自分の身体を整備しました。歯の治療を整体の先生から指摘され、腰痛・肩の具合も改善した次第です。