歯科の三大疾患はむし歯(齲蝕)、歯周病と顎関節症で、歯の喪失とは密接な関係があります。口腔系には歯、唇、口の粘膜、舌、顎関節、咀嚼筋群、表情筋の一部があります。歯科ではこの正常な発育と歯であれば虫歯(齲蝕)、歯ぐきであれば歯周病、顎関節であれば顎関節の正常な形態と機能、唇であれば歯列の状態による唇の形、舌であれば嚥下、発音、発語に関係する舌癖と歯列の関係、咬み合わせ由来の咀嚼筋群や表情筋 の発育を正常に且つ健康に発育させなければなりません。これらを阻害する因子のひとつが歯の喪失です。ここでは歯が喪失の3大原因である むし歯(齲蝕)、歯周病 と 歯の破折 について説明します。
1990年、歯がなくなる原因は、20歳以下は齲蝕、40歳以降は俗に歯槽膿漏と呼ばれる歯周病でした。2005年の調査では、齲蝕や歯周病で歯をなくす人は少なくなってきました。その訳は、齲蝕は放置することで進行して歯がなくなりますが、きちんと修復処置や歯内療法をおこなうようになったこと、歯周病は原因である歯垢や歯石を定期的に取り除くためです。しかし、食べ物を食べるだけの歯の数多くなり、ついつい、硬固物 を好んで食べる人が増え、その分、歯の破折は多くなりました。
ほとんどの歯は歯科医院での抜歯処置を経て喪失に至ります。歯周病が進行して歯がグラグラになり自然に脱落する歯もありますが、歯が失われる場のほとんどは歯科医院と考えて差し支えないと思います。そこで、歯科医院で抜歯される歯の直前の状態を調べることにより、歯が失われる原因を明らかにすることができます。
その理由として
1) 齲蝕は放置することで進行して歯が溶けてなくなりますが、きちんと修復処置や歯内療法をおこなうことで歯が長持ちしたこと。
2) 歯周病の原因である歯垢や歯石を定期的に取り除き、咬み合わせをそろえていますので、歯周病が進行しないこと。
3) 歯の欠損部にインプラント修復することで咬む力をインプラントにも分散させて、全体の歯に過剰な咬合力が加わるのを分散すること。
この3点が患者さんが理解されてきたために、歯がなくなることは極端に少なくなってきました。しかし、食べ物を食べるだけの歯の数多くなり、ついつい、硬固物 (豆類、タネ類、アメ、氷、乾燥食物など) を好んで食べる人が増えて、その分、歯のヒビや破折が多くなりました。くれぐれも、硬固物を咬む癖とつまようじなどの悪習癖はお止めください。歯科定期検診でいろいろなことを尋ねられて、正しい口腔衛生法をマスターしてください。