全身疾患を持った歯科患者に対しての全身管理とは、術中のバイタルサイン、すなわち血圧・脈 拍、場合によっては経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)などを連続的に監視することである。このような医療行為を、歯科麻酔科医は 「モニタリング」と称している。
このモニタリングを保険収載させることは、「安全な歯科治療への努力」への認知・評価を定着させる意味で、悲願とも言うべ きものだった。モニタリングが明確に保険医療の中に位置づけられたのは、今回の「医管」が初めてであり、やはり画期的と言わねばならないだろう。
また、今回の「医管」にはもう一つ、あるいは上記モニタリング以上に画期的な点がある。それ は、医科主治医療機関との連携が、保険制度上明確に評価されたことである。医管を算定する際には、個々の患者が持つ全身疾患を意識し、主病の主治医療機関 との診療情報を交換し、さらにその医療機関名をレセプトに明記することが求められている。これらのどれ一つをとっても、従前では考えられなかった「全身状 態への配慮」であり、高く評価されるべきものである。
しかしこの医管は、その一方で現行の制度のままではさまざまな問題を含んでいる。それらの問題 点については後ほど詳述するが、少なくともいくつかの点については、早急に改善がなされるべきと考えられる。
この医管は、日本歯科麻酔学会、日本口腔外科学会、日本障害者歯科学会など多くの学会の社保担 当者たちの働きかけによって実現した。私たちは、せっかく実現したこの保険点数を実のあるものとして守り、育てていかねばならない。そして、患者の全身評 価・全身管理と、他科との正しいconsultationを定着させていくことが、「安全な歯科治療」を担当する歯科麻酔学会認定医の使命であると信ずる ものである。
今般、日本歯科麻酔学会の場で、この医管をさまざまな角度から検証する機会を与えられた。検証 に当たっては、単に長所短所を列挙するだけでなく、この保険点数が全国各地でどの程度請求・算定されているのか、またそれに対する審査・返戻査定状況はど のようなものなのかを知ることも重要である。
そこで、全国各都道府県の開業歯科麻酔認定医に協力を求め、いわば「医管の生育状況」を調査したのが本稿の要 旨である。この調査結果をふまえて、医管が患者・医療機関双方にとってさらに有意義な制度として育っていくことを願って止まない。
各都道府県から開業歯科麻酔学会認定医を1〜2名抽出し、計61名に対し主に電子メールを用い アンケート調査を実施した。アンケートの設問は、主として下記の視点から設定した。
a.医管は開業歯科麻酔認定医の医療機 関でどの程度算定されているか?
b.各都道府県での、医管の算定状況はどのようなものか?また、それに対する審査・査定返戻の状況は?c.診療情報を交換する際の主治医師の反応はどのよ うなものか?
d.歯科から医科へ対診の内容はどのような現状であるか?
e.歯科医療機関のパルスオキシメータの理解度、および浸透度はどのような現状であるか?
今回は開業歯科麻酔認定医を対象とした。開業歯科麻酔認定医は、全身管理に精通しており、その 知識や手技を医療サービス(在宅訪問歯科診療や有病者の診療)に還元していることから、医管についての理解や運用にも積極的と考えたためである(設問 a.)。
また、開業歯科麻酔認定医には、自院での歯科麻酔臨床以外にも求められる要請がある。すなわ ち、周辺地域における歯科麻酔的医療行為の実施状況、およびこれらの認知・受容状況の把握である。
これには、臨床的側面と並んで、歯科麻酔的医療行為の診 療報酬面での受容などの、社会的側面も含まれると考える。今般の医管に関する調査に当たり、敢えて回答者にその地域における医管・モニタリングなどの受容 状況(設問b〜e)をたずねたのは、このような期待からに他ならない。
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