近年、「健康志向」「健康ブーム」が人々の間で高まり、それに伴い歯科疾患ないし歯科医療についての話題や情報がマスコミやコマーシャルで取り上げられることが非常に多くなってきました。
そのこと自体は国民が歯科治療により関心を抱くようになったことの現れてあり、歓迎すべきことに違いありません。しかし残念ながらマスコミやコマーシャルが供給している「歯科についての情報」には歯科に関する本当の知識にはほど遠く、それだけでなく「間違った情報」すら流布しているのが現状です。
さらに長年月に亘って歯科医院に通って歯科治療を受け続けてきた患者さまでも、「歯科治療についての正しい知識」を歯科医院で教育されている方は極めて少ないというのが正直な私の感想です。
それどころか、歯科医院に通い続けている内に大切な自分の歯を失い、歯周病も進行して、ますます口の中が悪くなっている気の毒な症例すら数多く拝見しています。「歯科に関する正しい知識」がないままに、歯科治療を受けていては、本当には自分の歯が良くならないばかりか、長期的にはさらに悪い結果を招いていることが非常に多いのです。
一般の方が歯科医院を訪れるのは、虫歯が進行して「歯が痛い」状態になった時でしょう。歯科医院を受診すると、「痛みを取る」ために、「シンケーを取る」あるいは「シンケーの治療」をしてもらう。その後、穴があいていては噛めないので「金属冠を被せる」処置をしてもらう。「痛みが収まり」「金属冠を被せて」「噛めるようになった」ら治療終了となり、ひとまず安心して帰宅する・・・こういうパターンを繰り返している方が非常に多いのではないでしょうか。
確かに「シンケーを取る」あるいは「シンケーの治療」をすればひとまず「痛みはなくなります」ね。でもこのような治療は歯のために良い治療なのでしょうか。「シンケーを取る」治療をしたら、もう将来痛くならないのでしょうか。そもそも「歯のシンケー」とはどんな物なのでしょうか。
しかし「歯の中に血が通っている」事実をご存知の方はほとんどおられません。「歯の中にはシンケーがある」ことは大人の患者はほぼ全員知っているようですが、「歯の中に血が通っている」こと全くといってよほど認識されていません。