歯並びの悪さについての欧米と日本の認識の違いから、ある程度、患者さんの「治療したい意志」に頼らざるを得ない着脱式装置での治療効果に、特に子供さんのケースで開きが生まれるようです。審美的にマイナスな歯並びをしていると、それが社会的に思わぬデメリットになってしまうのが欧米なのでしょう。それだけ、親御さんが熱心なのも頷けます。
その他にも、歯並び治療に協力的な欧米の背景として、契約制度を基本にした社会体系や合理主義的な思考パターンも関係しているのではないでしょうか。
これは、日本人が約束を守らないといったことでは決してないのですが、欧米では、宗教や家柄、年齢を問わず、よく約束(契約)を守ります。契約した以上は、それを遵守する精神が文化として根付いているのでしょう。
日本人の場合は、良くも悪くも「なーなー」なコニュミケーションが発達しています。約束が守られなくても、破られた側が、破った側に対して、「100%、非があるのはそっちだ」と糾弾することは、あまりありません。「次は気をつけて下さいね」といった具合に「やんわり」済ませるのが常です。この傾向は親しい間柄なら尚更のことでしょう。
歯並び矯正でいえば、子供が何度も口の中の違和感を訴え、親に「矯正装置を外したい」と駄々をこねたなら、日本人の親御さんの方が「仕方ないわねぇ」と容易に了解してしまう確率は高くなると推測できるのです。
逆に「契約遵守」が根付いている欧米では、こういった時、「歯医者さんに言われたでしょ」と、より厳しく、子供の訴えに対処する傾向にある為、着脱式装置の効果があがる可能性が高くなる訳です。