治療を成功に導くためには、正しい診断がおこなわれなければなりません。治療が多大な成果をおさめている理由は原因を正確に把握し、科学的で客観的なデータにもとづいて診断を行い、それにもとづいて正確な治療をおこなっているからです。
噛み合わせ症候群は、普段ものを噛んでいるときの顎の位置と、顎が楽でいられる本来の顎の位置とが一致していないことが原因で起こっています。治療はその二つの顎の位置(咬合位と安静位)を一致させることを目的としておこなわれており、多大な成果が得られています。
正しい診断のためにはこの二つの顎の位置が、どのくらいずれているのかを正確に知る必要があります。この二つの顎の位置のずれの大きさは、1ミリの何分の1という場合もありますので、これを狭い口の中、まして肉眼で確認することはほとんど不可能です。そのずれを正確に測定して客観的に記録し比較するためには、高度なテクノロジーの力をかりなければなりません。
今から40年も前にこの目的のための計測機器が開発されました。そして一部の臨床家のあいだで使用されてきて、度々の改良を加えられながら今日にいたっています。この装置を使うと、口の中をのぞかなくても、歯を噛み合わせているときの顎の位置と安静にしているときの顎の位置を、コンピュータの画面の上で比較することができます。
この装置ができたおかげで、噛み合わせ症候群の診断と治療は飛躍的に進歩しました。初めて科学的で客観的なデータにもとづいた診断と治療ができるようになったのです。噛み合わせ症候群の診断と治療は、顎の楽な位置、すなわち下顎安静位を基準にしています。診断はそこからの距離を測ることであり、治療はその位置で機能ができるようにすることです。
下顎安静位は筋肉が安静であること大切な基準ですが、そのためには筋肉が安静であるかどうかが証明されなければなりません。そのために開発されたのが、歯科用の筋電計です。この装置を使うと心臓の状態を調べるために心電計が使われるように、咀嚼筋の状態を調べることができます。この筋電計はおもに筋肉の安静状態を調べるために使いますが、そのほかにも、筋肉が正常に機能するかどうかを調べることができます。