酸性の強い食品というと、レモンやオレンジ、グレープフルーツなどのかんきつ類や、酢などの酸っぱい食品を真っ先に思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろんこれらの食品や、これらを使ったジュースやドレッシングなども酸蝕歯の原因となりますが、炭酸飲料やスポーツドリンク、ワイン、ビール、しょうゆなども、商品によっては酸性が強いので、そのような飲料を日常的に飲む生活習慣を改める必要があります。また、摂食障害である神経性食思不振症(過食症、拒食症)で嘔吐を繰り返すと、強酸性の胃液(pH1.0~2.0)が原因で酸蝕歯になることもあります。
例えば、朝食にオレンジを食べてビタミン補給、昼食に酢の物を食べ、仕事帰りにスポーツジムでひと汗かいてスポーツドリンクで水分補給、夕食は野菜サラダにドレッシングをかけて、食後にくつろぎながらワインを1杯――。このような何気ない生活のなかでも、歯が酸にさらされる機会は意外と多いのです。
酸蝕歯は年齢に関係なく、どんな人でもなる可能性がありますが、乳歯は永久歯に比べてエナメル質がやわらかいため、子どもは酸蝕歯のリスクがより高いといえます。フルーツや酢など、酸性の強い食品には体によいものもあります。食べるのを控えるのではなく、正しいとり方や対処法を知っておきましょう。
まずは、酸性の強い食品をダラダラととり続けないこと。また先に述べたように、酸性の強い食品をとった直後は、歯の表面のエナメル質がやわらかくなっています。食事の後は水やお茶で口をゆすいで酸を洗い流しましょう。そして、口の中に残った酸を唾液が中和してくれるのを待ち、30分くらいたってから歯を磨くようにするとよいでしょう。
睡眠中は唾液が出にくいため、酸の影響を受けやすくなります。就寝前には、特にていねいに歯を磨くようにしましょう。ただし、強い力でゴシゴシと磨くと歯が磨耗したり、歯肉(歯ぐき)を傷つける恐れがあります。歯ブラシは優しく、小刻みに動かすようにしてください。