高齢者の医療制度はますます注目されている。元々高齢者は病気がちで、社会保険は誰よりも必要である。
70-74歳の医療費自己負担を1割に据え置いている特例措置について、社会保障審議会医療保険部会は16日、5年間かけて段階的に2割に引き上げる案を議論した。この案は、厚生労働省の高齢者医療制度改革会議が2010年に示したもの。低所得者への自己負担限度額は、1割負担の場合と同じ額に据え置く。法律上は2割負担となっていながら、政治判断で法施行が「凍結」されている状況に、「法律改正の必要もないので、社会保障制度改革国民会議の議論を待つ必要はない」「議論は尽くされた」との意見が出た一方で、反対する委員もいた。
段階的引き上げ案は、現在70-74歳で1割負担となっている人の負担割合は据え置いたまま、新制度施行日以降70歳になる人から、2割とする。全員が2割となるまでは5年かかる。低所得者対策として、月額の患者負担が一定額を超えた場合に払い戻される高額療養費制度を使い、限度額を外来月8000円、総自己負担額1万5000円(住民税非課税、年金収入80万円以下等の場合)と、1割負担の現行のまま据え置く。
現状では、1割負担維持のため毎年約2000億円の予算措置がなされており、社会保障・税一体改革大綱でも「2013年度の予算編成過程で検討する」と明記されている。 高齢者医療制度改革会議の委員も務めた樋口恵子氏(高齢社会をよくする女性の会理事長)は段階的導入について、「1割の人が2割になるのではなく、3割の(69歳の)人が2割になる制度」と説明し、「『乏しきを憂えず等しからざるを憂う』という言葉があるが、学生もパート女性も3割払っている中、70-74歳だけ低いのは納得いかない。公平性を繰り返し主張して出てきた案だ」と段階的引き上げを支持した。
全国老人クラブ連合会理事の川尻礼郎氏は「当初は組織として反対だったが、1年ずつ適応させていくことは理解している。反対ばかりしても仕方がない」と容認の立場で述べつつ、後期高齢者医療制度導入時の混乱を念頭に「PRはしっかりしてほしい」と注文した。
代理で参加した高知市健康福祉部副部長の村岡晃氏は、国民健康保険の保険者の立場で、「しっかりした低所得者対策がなければ、医療費負担が増えたことによる生活保護の受給者が増え、総コストが増える可能性がある」と指摘。また、段階的な引き上げについて「国保は世帯単位で運用しており、その中で年齢で区分するのは大変複雑な作業。 システム改修にも時間がかかる」と実務面での問題を挙げ、十分な準備期間の確保や、システム改修に伴う費用の国による負担を要望した。
一方で、日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏や日本歯科医師会常務理事の堀憲郎氏は、受診抑制による健康状態悪化への懸念などから、従来の反対の立場を改めて強調した。
早く高齢者の医療制度を導入する欲しい。