1498年、中国の皇帝が世界初の歯ブラシを使い始めた。この歯ブラシは、骨や竹の台に、豚の固い毛をかまぼこ形に植え付けたものだった。歯の衛生はこのときから向上し始めたのだ。
歯ブラシ(歯科材料)が登場するまで人々がどうやって歯をきれいにしていたのか、またそもそも歯の手入れをしていたのかは、文化や階級によって異なる。昔のチュー・スティック(チューイングス・ティックまたはトゥーススティック)は小枝だった。小枝の片側の端を完全にほつれるまで噛み、そのほつれた端の部分で歯を磨いたり擦ったりしていたのだ。
古代エジプトの墓には、埋蔵品の中にトゥーススティックが含まれているものがある。故人があの世でも歯をきれいにしておけるようにするためだ。
ギリシア時代やローマ時代の古文書には、人々が爪楊枝を使って歯をきれいにしていたことが記されている。お金持ちなら、真ちゅうや銀で作られた爪楊枝を買うこともでき、そうした爪楊枝の多くには、これ見よがしと言えるほど手の込んだデザインの取っ手が付いていた。
最初の歯ブラシは木の枝を除いたケースであります。楊枝がデザイン化されました。装飾品として使われている時代もありました。イスラム教徒は、必ず、浄化の場所で、「ミスワーク」と呼ばれる木片で歯を磨きます。そのあと、仏教徒と同じように鼻や耳の穴を洗浄します。西洋では、17世紀代に「現代と同じ形の歯ブラシ」が作られたと言われているのです。
しかし、18世紀になってもまだまだ使用されませんでした。17世紀ごろからヨーロッパでも使用されるようになりました。19世紀に大量生産されるようになるまで一般的ではなかったのです。これが歯磨きの歴史です。
アステカ族やナワ族の祖先は、古代中国やインドに見られる歯木を使いました。歯茎に適度な刺激を与え、マッサージをしていました。歯ブラシは、サトウキビやユリの根や桜桃の木などで作られ、噛んで歯を磨いていたのです。
その西洋で開発された植え込み式の歯ブラシは、徐々に認められ、ついには知識人の間で話題の種までになるにいたりました。1903年(大正3年)に小林富次郎商店の現在のライオンが歯ブラシの歴史を変えたのです。萬歳歯刷子(歯科用品)の発売です。
1938年2月24日にはデュポン社がナイロン製の歯ブラシを初めて売りました。江戸時代になると、房楊枝や爪楊枝を売る専門店「楊枝屋」も登場し、広く一般に普及しました。浮世絵にもしばしば房楊枝を使用しているところがみられます。
日本で現在のような歯ブラシが作られたのは明治5年です。インドから輸入したイギリス製の歯ブラシを見本に、鯨のヒゲで柄を作り、馬の毛を植えました。クジラ楊枝と呼ばれました。初めは横楊枝(西洋式)、歯楊枝、歯磨楊枝といった名で呼ばれていたのですが、明治23年の第3回内国勧業博覧会で歯刷子の名称で出品されたのが、「歯ブラシ」という言葉が使われた始まりといわれます。