虫歯菌は歯質に感染し歯を蝕んで進行していきます。また、虫歯菌は1μと見えるレベルではなく、虫歯菌に感染した部分の完全除去は困難です。
臨床では、虫歯菌を染めだす溶液が開発されており、それをガイドに削合可能です。削合する際にもカリソルブという虫歯を溶かす溶液も開発されており、麻酔や削合による痛みを最小限にする手法も出てきました。
虫歯菌による影響を考慮する必要があるのが象牙質です。エナメル質と違い細管構造になっており、2~3μの管のため虫歯菌も侵入可能で、感染すると歯質が柔らかく硬度が下がっていき、欠けた部位を塞ごうとしても、接着剤がしっかりくっついてくれません。
そのため、しっかり削合する必要があるのですが、3Mixという薬剤を使うと感染した歯質の細菌が死滅することで、歯質の硬度がやや戻ります。それにより使用できる歯質が増え、本来感染しているからと削合していた部分が減ります。歯は一度削ると元に戻る訳ではないので、虫歯菌を残さないこと、削合量を減らすことといった補綴物ではなく、手技・手法に費用をかけれる時代だといえます。
さて、3Mixとは何かというと、歯科向きの3種類の抗菌剤を調合し、歯の中で密閉した局所に入れて虫歯菌に感染した象牙質を無菌化して温存するという治療法をさしています。
通常、虫歯菌に感染した歯質を検知液で削合後、水酸化カルシウム薬剤に混ぜて深部に使用しています。それは、薬剤に近い部位は肉眼では効果を感じやすいですが、薬剤から遠い部位の虫歯菌完全無菌化や虫歯の取り残しのない安定的操作は困難と考え、通法に従い、感染歯質の削除をある程度行い、ここに作用させると確かな効果が見込めるという手順で使用するという方針です。
虫歯の深い所を処理する水酸化カルシウム製剤(強アルカリによる殺菌作用と組織刺激による硬組織形成作用があり第2象牙質形成を促進)に混ぜての使用と細菌感染した根管から骨に広がってしまった根管治療についても、根尖部周辺骨や根管内の細菌の無菌化を目的として、水酸化カルシウム製剤に混ぜて使用を行っています。
カリソルブとは、薬液で虫歯を溶かし、ドリルを使わずスプーンで拭いとる方法です。
従来の方法は、ドリルで削るため、振動や摩擦で発生する熱が歯の神経に伝わり、痛みを発生させます。
ところが、カリソルブは虫歯の部分だけが薬で溶け、専用の器具でかき取るため、熱を発生せず、振動もほとんどないため、痛みを抑えられます。健康な歯質を削らずに済ますことができる上、取り残す確率は非常に低くなります。
治療はまず、ホワイトニングなどの成分として知られる次亜塩素酸ナトリウムと、3種類のアミノ酸を混ぜた溶液を治療直前に注射器状の専用の容器で混ぜ合わせます。ジェル状になった混合液を虫歯になった象牙質に流し込み、10分ほどおくと、虫歯部分だけが溶け、専用の器具でかき取ることが可能となります。器具の刃はとがっておらず、削り過ぎることはありません。
今までも、虫歯だけを染色する液体は存在していますのでそこをドリルで削り取ることは可能でした。その場合、取り残しは減りますが、ドリルが熱を発生するため、痛みは変わりませんでした。