ドライマウスはたかが口の渇きと思われ、軽視されがちであること。ドライマウスの原因はいろいろ ドライマウス研究会の調べによると、日本のドライマウス患者数は800万人、予備群は約30万人と推定されている。「たかが口の渇き」と軽視されがちだが、消化器の一部であり、感覚器でもある口は、非常に重要な器官だ。唾液量の低下で「食べにくさ」「話しにくさ」なども現れ、精神的な苦痛も小さくない。
ドライマウスの原因はストレス、更年期障害、薬の副作用、筋力低下などだが、実際はこれらのいくつかが複合しているケースが多い。
「ストレスが原因でドライマウスを招いている場合は、患者さんの話をじっくり聞き、軽減することで、症状がよくなることもあります。また、部屋を乾燥させない、こまめに水分をとって口の中をうるおす、お酒をほどほどにするなども、ドライマウスの予防や対策にはいいでしょう。喫煙本数が多いと唾液分泌が抑制される可能性があります。喫煙者は習慣を見直したほうがいいと思います」(鶴見大学歯学部病院 病理学講座教授・斎藤一郎歯科医師)
唾液の分泌量が低下した状態である「ドライマウス」と、全身の健康との関連が近年指摘され始めている。ドライマウスとかぜについての調査を実施した国立病院機構栃木病院歯科口腔外科医長の岩渕博史医師に聞いた。
たとえば、ドライマウスになると口腔が汚れるので誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすくなります。口の中が渇くと食べ物をのみ込みにくくなるので、不慮の事故の死亡原因でもっとも多い窒息の危険性も高くなると考えられます。食道がんの危険因子の一つである逆流性食道炎の人にはドライマウスが多いとの報告もありますが、このことはドライマウスが食道がん発症に関与する可能性を示しています。
「唾液は口腔内やのどにウイルスや細菌が付着し感染するのを防ぐ」といわれているので、日本人を対象に調査をしてみました。するとドライマウスの人は、そうでない人よりもかぜやインフルエンザに約2倍かかりやすいというデータが出ました(2012年に岩渕歯科医師が論文発表)。
高齢者ではかぜやインフルエンザの罹患(りかん)から肺炎を生じることがあります。肺炎は高齢者の死亡原因で多い疾患であることからも、ドライマウスを軽視すべきではないといえるでしょう。
ドライマウスは食事や会話など関する重要な件ですので、重視すべきである。