医療事故が頻繁に発生してしまった。医療安全を巡って、シンポジウムが開催された。診療所でもそこそこしては行けません。
「医療安全全国フォーラム2012」のシンポジウムでは、中小病院や診療所における安全対策などが話し合われた
医療安全全国共同行動(高久史麿議長)は25日、さいたま市で「医療安全全国フォーラム2012」を開催した。「安全な医療システムの構築をめざして」と題したシンポジウムでは、中小病院や診療所における安全対策が話し合われた。
シンポジウムでは、医師会や歯科医師会、看護協会、臨床工学技士会、都道府県病院協会などの立場から、安全対策についての報告があった。
日本医師会の高杉敬久常任理事は、診療所レベルでも医療の安全性を高めることが目標とし、作成した小冊子「医療事故削減戦略システム」などについて説明した。
冊子は、頻度の高い事故の原因を分析し、再発予防策を立てることを目的としており、緊急時の迅速対応や薬剤の誤投与防止など、9項目について重点的に説明している。
高杉氏は、「診療所の院長が医療安全対策の講習に出たとしても、1人だけではどうにもならない」と指摘した上で、医療機関を挙げて防止に取り組んでほしいと訴えた。
■中小医療機関の事故も問題に
東京都看護協会の嶋森好子会長は、中小規模の医療機関の医療安全対策をテーマに特別報告を行った。
1999年には、大学病院での患者取り違えなどの医療事故が社会的に注目されたが、嶋森氏は、その後10年ほどたって、中小医療機関での事故が問題になったとした。
2008年には、点滴の作り置きを行っていた三重県伊賀市の診療所で、セラチア菌の院内感染によって死亡者が発生する事故などが起こった。
嶋森氏は、大病院だけでなく、小さな医療機関でも事故が起こることが認識されたほか、有床診療所でも全身麻酔による手術など、侵襲性の高い治療が行われている場合もあり、小さな診療所だから医療安全はそこそこでよいという考えは通用しなくなったとした。
嶋森氏らは、点滴作り置きの事故を機に、三重耳鼻咽喉科(津市)の荘司邦夫院長に事故についての分析を依頼。荘司氏は、背景には安全に対するコンプライアンスの意識が低いことや、「忙しかった」という理由で済ませてしまう組織安全文化、職員が定着しないことなどがあると分析した。
荘司氏はさらに、中小医療機関の安全管理上の課題について、施設の形態が多様であり、院長の個性によって安全管理が左右されたり、定期的な監査が行われないなど監視システムの脆弱さがあったりするほか、マンパワーの不足や安全に投資できていないことなどを挙げた。
嶋森氏は、日常業務のプロセスについて、安全が確保されるように設計や標準化を行うほか、現場スタッフにそのプロセスに従って業務を遂行するよう習慣化させることを挙げ、プロセスに従っていてもエラーが生じた場合、チームで原因を分析し、新たにプロセスをつくり直すことが大切とした。
医療事故を防ぎ、日常から医療安全を保つのは大事なことである。