わずかな骨格性不正ならば歯の移動によってカモフラージュして治療することが可能です。ところが、その程度が著しく大きく、オーバージェットがマイナス5mmを越えるなどの場合は一般的な矯正治療の適応の範囲を越え、下あごを切断して後ろに下げるなどの外科的手法を併用した外科矯正治療が行われます。
この骨格性不正が大きい病気を顎変形症といい、一部の病院で保険診療の対象となります。顎変形症のほかに、厚生労働大臣が指定する23の疾患(唇顎口蓋裂、第一・第二鰓弓症候群、鎖骨頭蓋異骨症、Crouzon症候群、Treacher-Collins症候群、Pierr Robin症候群、Down症候群、Russell-Silver症候群、Turner症候群、Beckwith-Wiedemann症候群、尖頭合指症、ロンベルグ症候群、先天性ミオパチー、顔面半側肥大症、エリス・ヴァン・クレベルド症候群、軟骨形成不全症、外胚葉異形成症、神経線維腫症、基底細胞母斑症候群、ヌーナン症候群、マルファン症候群、プラダーウィリー症候群、顔面裂)に起因するかみ合わせの異常、および上あごや下あごの手術なども保険診療の対象となります。大学病院矯正歯科などを受診されると良いでしょう。
バイオネ-ターやヘッドギアなどの治療効果について、近年米国や英国で上顎前突患者に対する大規模な研究が行われ、オーバージェットの減少と言う点で充分な治療効果が認められました。しかし骨格性の不正の解消については、平均的には効果はあまり認められませんでした。すなわち、上顎前突は主に前歯の傾きが変わることでカモフラージュされていました。矯正治療は、歯並びを直すだけではなく土台である骨格の改善も行うのですが、治療には限界があるということを示していると思われます。
なお、Ⅰ期治療を行って生え変わりがスムーズに進んだ場合、Ⅱ期治療は必要ないかもしれません。Ⅱ期治療では、マルチブラケット装置の治療効果は歴史的に証明されています。最近では、Ⅱ期治療で透明の樹脂で出来た取り外し式矯正装置による治療が行われています。
なかでも10年以上前に米国で開発されたインビザラインについては複数の比較研究があり、マルチブラケット装置の治療効果には劣るものの治療効果があることが報告されています。ある種の不正咬合の治療には効果を発揮すると考えられます。