食育において、食育基本法や食育推進基本計画に記載されている内容の多くは、栄養、安全性、地産地消、食物の生産、などの「食物」に関るものが多く記載されておりますが、味わい方、食べ物に応じた噛み方、美味しさを引き出す五感をつかった食べ方、などの「食べ方」に関連する食育の記述が少ないようです。そこで歯科関連領域からは、「食べ方」に関連する食育を推進しています。
つまり、栄養バランスを考えた旬の素材をどのように口に取り込み、味わい豊かに食べるか、心の和む美味しい食べ方、飲み方などに関する「食べ方」については、食育の大きな柱として明確に位置付けられます。「食べ方」は乳幼児期、学童期に口の成長に伴って発達します。この時期の噛みかた、飲み方、味わい方などの「食べ方」」の機能発達期に本人や家庭への「食べ方」を主とした食育が必要です。
食べ物は「口」から食べるのであり、食べる器官の働きとそれに伴う味わいや寛ぎなど食べ物が口に取り込まれてからのみ込まれるまでの食べ方を知識と体験を通して育むことが必要です。食べ物と食べ方の知識と体験があって初めて、食が健全な心身の糧となり、豊かな人間性を育むことができます。
このような「食べ方」の食育については食育基本法に具体的な記述はほとんどありませんが、「食育」の重要性と多様性を鑑みて、食べ方に関わる食育の推進に歯科関連領域が積極的に参加すべきと思います。 口は食物を摂る入口の臓器として噛む機能だけでなく、脳機能から運動機能まで全身的に幅広い影響を及ぼしていることが解ってきました。
よく噛んで食べることは唾液の分泌を促し味を感じやすくし、満腹感も得られやすくなるため肥満の解消や予防、生活習慣病の予防にもつながります。よく噛んで食べる習慣を身につけ、それを維持するために、自分の歯で何でも噛めるようにしておくことが大切です。そのためには、むし歯や歯周病の予防・治療を心がけ、お口の健康を保つ必要があります。
肥満や生活習慣病も「早食い」「丸のみ」などの食べ方が大きく関与しています。小児期からの健康づくりに「食べ方」を含めた健康な食習慣づくりの推進と高齢者までの生涯にわたるライフサイクルに応じて健康診断や保健教育を介した「食べ方」の食育の推進が大切です。