近年の科学や技術の進歩は著しいものがあります。ここ十数年の間に歯科材料の中で重要な位置をしめるようになったものに、光硬化型<ひかりこうかがた>材料と呼ばれるものがあります。これは光をあてることで、液状やペースト状のものが固まる性質をもったもので、接着用のセメントやプラスチック系材料に応用されています。
光で固まる材料は、歯科材料ばかりではなく印刷や建築材料等、色々な分野で活用されています。30年程前にはじめて歯科で実用化されたときは、紫外線をあてて固めるタイプのものでした。
これは紫外線の悪影響が心配されたため、現在用いられているものは、目にみえる無害な光線で固まるように改められ、主に青い波長の光が用いられています。最近、歯科医院に通院した方の中にはピストル型や、筒の先から青白い光が出る器械を目にした方があるでしょう。これが材料を固めるための光を出す、光重合機<ひかりじゅうごうき>という機械です。
いままでのセメントやプラスチックは粉と液、液体と液体、ペーストとペースト等の2つのものを混ぜたり、練ったりした後、一定時間が経過すると化学反応で固まるものでした。ある時は早く固まりすぎたり、逆に固まるのに時間がかかりすぎたりと、不便な面がありました。
光で固まる材料では、例えば虫歯の治療に用いるプラスチックでは、光をあてるまでは、きれいに形を整える操作時間に十分な余裕があり、その後、光をあてると数秒から数十秒でスピーディーに固まるという利点があります。
しかし、材料が厚くなったり、色の濃い場合は光が深いところまでとどかず、固まるのが不完全になる可能性があります。また、材料は光をさえぎる場所や容器に十分注意して保管しなくてはなりません。