単純ヘルペスウイルスは非常によくみられ、容易に感染するウイルスです。実際、80%以上の人が単純ヘルペスウイルスI型に感染します。その多くは、乳幼児期に、親や兄弟や親戚との接触を通して感染します。ほとんどの場合、初感染では症状がわずかであるか全くないものの、時に軽度から重度にわたる痛みを起こし、嚥下(飲み込み)しにくくなることがあります。たいてい8~16日で病変はなくなり、痛みは軽減します。
最初の感染後、ウイルスは神経の奥深くに潜伏します。多くの人はHSVを保持していることを終生知らずに過ごしますが、20%程度のHSV保持者には再感染がおこります。そのほとんどは、口の周りに起こる口唇ヘルペスと呼ばれるもので、顔の皮膚と唇の境い目に最も多くできます。
初感染したHSVは局所にて病巣を生じたのち、または不顕性感染のまま上記の神経節に潜伏感染する。免疫低下時や免疫抑制剤などの投薬時に再活性化され局所に痛みを水疱、びらんなどの症状を伴って現れることがある。これらの水疱を採取してトリパンブルー溶液などで染色、顕微鏡下で観察するとballooning-cellと呼ばれる巨細胞をしばしば認める。
HSV再感染が口の中におこることもあります。その場合、硬口蓋・歯肉・舌の先などに小さな潰瘍として現れます。口唇ヘルペスは通常、小さな水疱(水ぶくれ)の集まりとして始まります。これらは、すぐに破れて糜爛(びらん)や潰瘍になります。数日すると、かさぶたができてきます。たいてい1週間ぐらいで完全に治り、跡形や後遺症の残ることはありません。
口唇ヘルペスは、口腔-性器接触も含め、簡単に人から人へとうつります。また、ウイルスは、同じ人の目や鼻や爪などの他の場所へと広がることもあります。紫外線、風邪、ストレス、外傷、薬あるいはステロイドやEtanerceptの服用による免疫力低下などが原因で口唇ヘルペスは再発することがあます。何が原因になっているのかわかっている場合は、かかりつけ医に知らせましょう。
ヘルペスウイルスの頻繁な再発等による後遺症として残った神経痛を和らげるためには長期間の治療が必要となる。神経痛を和らげる為の治療法については各製薬会社や医療機関により現在も研究開発が進められている。
海外では2002年米国で英国系製薬会社による女性対象に単純ヘルペスワクチン候補薬の治験が実施される。現在も米国及び英国で単純ヘルペスワクチン及び局所感染予防薬や完治薬の研究開発中である。日本国内での研究では東京大学や大阪大学で単純ヘルペス感染の仕組みが解明されている完治に向けた新しい治療法や感染予防法の開発に生かされている。最近の研究成果により東京大学で薬剤ML-7により単純ヘルペス感染予防の動物実験に成功している。
一番の治療は、他のウイルス感染症にも共通するように、感染中(約1週間)に十分な栄養や水分の補給を確実にすることです。単純ヘルペスウイルス感染が非常に早期に診断された場合、かかりつけ医はその罹患期間を短くするための薬を処方することもあります。このウイルスは、再発と再発との間の期間においても、体の中の神経細胞に潜伏するため、完全治癒は難しい。
日光に当たる前に日よけ止めクリームを唇につけることが、口唇ヘルペスの予防に役立つでしょう。かかりつけ医が処方する抗ウイルス剤で、口唇ヘルペスが起こる頻度を軽減できる可能性もあります。そのほとんどの薬は、ある一定間隔で内服し続ける必要があります。