現在、歯科医療も国の低医療費政策、歯科医師の過剰問題などによりおかしくなってきていますが、さらにひどい状況にあるのが歯科技工士の方々です。日本の歯科の場合、ほかの科と比べて、桁違いに医療費の抑制が行われています。お隣の韓国と比較すると、すでに日本の歯科医療費の単価は、1/5程度になっています。
大半の技工士の方の年収が200万前後、1日の労働時間の平均が12時間、離職率が8割などといった数字からもわかるように、もうすでにめちゃくちゃな状態です。技工士学校も、次々と閉校に追い込まれています。
私も、大学にいた頃自分で技工をやっていた時期がありましたのでわかりますが、決して楽な仕事ではありません。歯科技工は、要求される技術レベルが高く、手間と時間のかかる仕事です。歯科の医療費が下がると、歯科医院は、生き残りをかけて、原価をぎりぎりまで落とそうとします。歯科医院で原価で大きな割合を占めるのは、材料費と人件費、外注の技工料金です。
もうすでに、ほとんどの歯科医院で人件費、材料費は限界に近く落としていますので、今でさえも低い技工料金をさらに落とそうとします。ちなみに、取引のある技工所は、15年以上料金を上げていません。むしろ引き下げていたりします。
さらに、最近では人件費の安い中国に技工所を作り、国内での技工料金の半額程度で請け負うところまで出てしまいました。厚労省は、これらは「雑貨」として、日本に輸入することを認めていて、それを使用するのは歯科医の自己責任でということになっています。
しかし、日本の法律では、歯科技工は歯科技工士と歯科医師にしか認められていないはずです。中国では、おそらく現地の中国人に技工物の作り方を教えて、技工物を作らせているのだと思いますが、これで日本国内との整合性が取れるのでしょうか?
整合性が取れるということであれば、日本国内でも、雑貨として技工物を作り、歯科医師の自己責任で使用すれば、問題ないということになります。確かに技工料金が安くなれば、私たち歯科医院は一時的に助かりますし、国はさらなる歯科医療費の削減を推し進める大義名分ができるのでしょうが、このような状態はいつか破綻します。
そのうち、偽装の問題や劣悪な品質のものが出回ってくるでしょう。歯科技工物は、常に口の中にとどまるものです。そこに誰が作ったかわからず、原材料に何が使われているかはっきりしない雑貨扱いのものを入れてよいのでしょうか。
確か以前、技工物の料金設定は、技工物の点数の7割程度が適当などという見解が、厚生省から出ていたと思いますが、全く絵に書いたもち状態で、おそらく3割程度がいいところではないでしょうか。そんなことをしたら、今度は外注元の歯科医院が倒産します。