むし歯、歯周炎からの炎症が上顎洞に入り上顎洞炎を起こすことがあります。これを歯性上顎洞炎といいます。元来、上顎洞は歯と隣り合っているので、むし歯を治療せずに放置していると、歯性上顎洞炎になることがあります。
歯性上顎洞炎が起こる場所、上顎洞とは、上の奥歯の根の上部から、目の下の部分にかけてにある頭の骨の内部にある空洞のことで、副鼻腔という空洞の一部分です。その上顎洞が炎症を起こすと、まるで副鼻腔炎と同じような症状となります。そして歯性と付く場合、歯が原因で起こる上顎洞部分の炎症ということになります。
そんな部分がどうして歯が原因で炎症を起こすのか? 実はごく一部の人は、上あごの歯は根の先端が上顎洞という空洞に突き出ていたりすぐそばに接近していたりする場合があるのです。そのため、次のような場合、感染が原因で炎症が上顎洞の空洞内に広がってしまうことがあります。
1虫歯を放置し根の先端部分から空洞に細菌が入り込む
2歯周病が進行し歯の周囲から空洞に細菌が入り込む
3根の治療で器具が空洞に一時的に飛び出す
4抜歯の際に歯の根が空洞に落ちる
5歯を抜いた後に口と空洞が一時的につながる
なお、この病気は下あごでは起こりません。下あごの骨にはこのような空洞は存在しないからです。
上顎洞炎の治療とむし歯の治療をいっしょに行う必要があります。上顎洞炎に対しては、鼻の入り口近くから針を刺して上顎洞を洗浄し、上顎洞のなかのうみを洗い流し、抗菌薬の投与を行います。同時に歯科で原因歯の治療を行います。
抜歯後などにむし歯の部位に穴があき、口のなかと上顎洞がつながってしまうことがあり、手術で閉鎖しなければならない場合があります。 これらの治療によっても改善しない場合は、内視鏡下に上顎洞と鼻腔をつないでいる穴を大きく広げ、なかのうみを除く手術を行います。