きざみ食とは、食べ物を小さくきざんで、噛む力が弱い人も食べられるようにした食事のことです。これには注意点がたくさんあって、ただきざめばいいというものではないようです。
たとえば、ぱりぱりした食感とかさくさくした食感を持った食べ物というのは、そのまま食べるときには非常においしいものですが、きざんでしまうとぱさぱさした細かい食べ物になって、普通に飲み込める人が食べても、飲み込みにくいものになってしまいます。
キャベツの千切りをおもいきり口にいれてしまったあとのことを考えてみてください。
健康な歯と飲み込む力があっても、千切りしたキャベツがまとまらなくてなかなか飲み込むまでにたどりつけないって感覚、わかりませんか。それに入れ歯をしていたりすると、歯茎と入れ歯の間に入り込んで「痛い!」ということにもなってしまいます。
これを噛んだり飲み込んだりすることが困難な人が食べたらどうなるでしょうか。人は食べ物を飲み込む前にはよく噛みながら唾液を混ぜて、飲み込みやすい状態をつくるのですが、噛む力が弱いと、これがうまくできません。なんてことでしょう。せっかく噛む力が弱い人のためにきざみ食を作ったのに、これでは逆効果です。
食べ物を飲み込みやすい状態にできなかったらどうなるでしょうか。食べ物が一つにまとまっていないため、のどのどころでばらばらになってしまいます。そうすると、思わぬところに食べ物のかけらが行ってしまうのです。元気な人は、ゴホッゴホッとむせて食べ物をはじきとばすことができます。
でも、その力が弱くなっていたりすると、気管から出すことができずに、肺炎を起こします。というわけで、きざみ食を作るときには、その食べ物のもともとの食感がどういったものかによっていろいろ気をつけなければなりません。
もともとしっとりとしたものなら細かくするだけでもずいぶん良いことでしょう。では、さくさくしたりぱりぱりしたものをきざみ食にするにはどうすればいいでしょうか。たとえば、さきほど話したキャベツの千切りなら、ゆでて小さな温野菜にしたり、どうしても固い芯などは取り除いておけば、食べやすくなるでしょう。
あとは、卵とじにしたり、あんかけにしたり。マヨネーズで和えたりすると、飲み込みやすいでしょう。あまり噛んだり飲み込んだりすることが難しいようなら、いっそのこときざみ食にこだわらず、一部もっとやわらかい食事に切り替えるなどの柔軟な対応をすることも必要です。