大規模災害に備え、津市の津歯科医師会が、歯ブラシと歯磨き液一万三千人分を購入し、市内の各歯科医院に配置した。災害後の避難所生活では歯磨きができず、口の汚れが原因の誤嚥性肺炎で亡くなる高齢者が多いため。歯科医師自らが避難所に届け、歯磨きの重要性を伝えることで、悲劇を防ぐ。
会に加盟する津市内の百三十七医院に、歯ブラシ百本と歯磨き液二十四本をそれぞれ配った。水が使えない場合を考え、歯磨き液は水なしで使うタイプ。口に含み、磨き終わった後に吐き出す。飲み込んでも無害という。
歯磨きの重要性が浮き彫りになったのは、一九九五年の阪神大震災のとき。神戸市などの調査では、地震による家屋倒壊や火災などで亡くなったのは五千五百人余。一方で間接的な要因による死者は、震災後二カ月以内で九百二十二人に上った。四割が肺炎で、口内の細菌が唾液などとともに肺に流れ込んで発症する誤嚥性肺炎も含まれる。高齢者は、のみ込む力が弱るため誤嚥しやすく、口の中を清潔に保つことが重要になる。
津市は東海、東南海、南海地震の発生で、最大一万六千人の避難者が出ると想定される。歯磨きセットは行政なども備蓄しているが、被災者に届くまでに時間がかかる。市内各地に分散している歯科医師が避難所や医院で配ることで、早く被災者に届くようにする。鎌谷義人会長は「全国から物資が届くまでの間、口の健康を守り、亡くなる人を減らしたい」と話している。