一般の方々は、すべてのひどい歯周病が歯周病菌によって起こると思われている方が多いと思いますが、実は部分的な歯周病で一番多いのが、かみ合わせによって起こる歯周病なのです。かみ合わせによる、ひどい歯周病は、歯科の専門用語では咬合性外傷と呼ばれます。咬合とは上下の歯のかみ合わせのことで、つまりかみ合わせで歯が外傷になっている状態を言います。
歯科学では、咬合性外傷は歯周病とは原因が違うため別の病気の分類になりますが、咬合性外傷と、ひどい歯周病は症状がとても似ているために、患者さんは歯周病と認識しますし、歯科医も患者さんにひどい歯周病と説明することが多いのが実情です。
意外かもしれませんが、奥歯の被せ物による歯周病の症状は前歯の糸切り歯(犬歯)に関係していることが多くあります。犬歯は実は噛合わせの上で、奥歯を守る大切な役割をしているのですが、歯ぎしりなどで犬歯が磨耗すると、前歯と奥歯のバランスが崩れ、結果的に奥歯が被せ物による、ひどい歯周病の症状になることがあります。
歯並びもまた、噛合わせによる被せ物による、ひどい歯周病の症状の原因になります。犬歯が前に飛び出しているいわゆる八重歯は、犬歯が奥歯を守る役割が出来ないため、奥歯が被せ物による、ひどい歯周病の症状になる可能性がありますし、上下の前歯が全く噛合っていなくて、奥歯だけで噛んでいるオープンバイトと呼ばれる歯並びは、奥歯の負担が非常に大きく、奥歯が被せ物による、ひどい歯周病の症状になる確率が高くなります。
また、受け口の歯並びも同じように奥歯への負担が大きいので被せ物による、ひどい歯周病の症状になる可能性が高くなります。人口物である被せ物や詰め物の噛合わせが高い場合にも、その被せ物がしてある歯以外に噛合う歯も被せ物による、ひどい歯周病の症状になる可能性があります。
噛合わせによる、ひどい歯周病の症状は、普通の歯周病と症状はほぼ同じです。初期は、なんとなく痛みを感じる時が時々ある程度ですが、症状がある程度すすむと物が噛めなくなるほど痛くなることもあります。歯の揺れは、症状がすすむほど顕著になってきます。歯の揺れ具合と平行して、歯茎が腫れることもあります。
ひどい歯周病で、お口の中全体が調子が悪く食べ物が食べられないといらっしゃった方です。写真で見ると、前歯の4本の長さが通常の歯の長さよりかなり短いのがわかります。おそらくお口の中のいろいろな場所を少しずつ治している間に、全体の噛合わせが低くなってしまって、奥歯にも前歯にも過剰な力が掛かって、ひどい歯周病になってしまったものと考えられます。
ひどい歯周病治療後の写真です。ひどい歯周病の処置をすべての歯と歯茎に施し、揺れていた歯を固定するためと、全体の噛合わせを理想的な高さまで、かさ上げするために、すべての歯を差し歯でつなぐブリッジタイプの差し歯を作りました。噛合わせが理想的な高さになり、歯も歯茎も健康な状態になったため、食べ物も良く噛めるようになりました。