医食同源という思想をご存知ですか?なんとなく字を見ていると想像がつきそうですね。いわゆる「医療としての食事」とか「食事としての医療」みたいなものを指し示しているのでしょう。
それにしても、これだけではイメージが先走って細かいことがわかりませんね。医食同源のイメージをもっとはっきりさせるために、まずは医療と食事のイメージをはっきりさせましょう。
医療とは、人間を健康な体にするための活動です。医療の目的は、人間の体を怪我や病気から回復させること、怪我や病気をしにくい状態に保つこと、怪我や病気をしにくい体をつくるための方法を見つけることなどです。
それでは食事の目的は何でしょうか?
食事とは、人間が栄養をとるための行為です。生命を維持すること。様々な動作をするためのエネルギーを体内に蓄えること。体の成長を助けること。これらが基本的な食事の目的です。
全く別のものとも言えますが、共通点はこの時点で見つけることができますね。つまり、医療も食事も人間の体のためにあるということです。それでは、食事でも医療のように、人間を怪我や病気から回復させたり、怪我や病気をしにくい状態に保ったり、できるのでしょうか。
医食同源ということばは、それを「できる」といっています。もちろん、食事だけで大怪我でもなんでもたちどころに治ってしまうなら、医者や医学はいらなくなってしまいますから、そんなに大袈裟な話ではないのでしょう。やはり大怪我をしたら外科に行って治療してもらわなくてはなりません。
それでは食事にはなにもできないということになるでしょうか?それは違う気がします。治癒力の高い体を作ることは、食事によって可能かもしれません。もしかしたら、食事によってカルシウムをきちんと採っておけば、外科に行ってギブスをしなければならないような大怪我には発展していないかもしれません。
私たちは胃が痛くなると胃薬を飲みます。腸の調子がおかしくなると整腸剤を飲んだりします。貧血気味で鉄分を補給するためにサプリメントを飲む人もいるし、肌が荒れて来るとビタミンCのサプリメントを飲んだりする人もいます。これらの成分は、食事では摂取できないものなのでしょうか?
ご存知の方も多いことでしょう。これらの薬やサプリメントに含まれている成分は、すべて、私たちの食事に取り入れることが可能です。薬の原料やサプリメントの原料は、元は自然界にあり、はじめから、様々な食材の中に含まれています。
薬などは、急な異変に対処するためにあると考えたほうが良いでしょう。私たちは食事で、出過ぎた胃酸から自分の胃を守ることもできるし、普段から腸内を掃除してくれるような食物を食べておくことで、腸の状態を整えておくこともできます。貧血を防ぐ食材や、肌をきれいにしてくれる食材もありますね。
ここまでくれば、医療と食事がずいぶんとつり合いのとれたイメージになってきたのではないでしょうか。私たちは、食事で自分たちの体の異変を未然に防ぐことができ、多少の異変に気付いたあとも、回復させることができます。
毎日の食事が体にとって良いものであれば、大きな病気なども防げるでしょう。医療の助けを借りて治療をしたあとも、回復や、体の正常な状態を維持するために、バランスのとれた食事をすることが必要になるでしょう。
ここまで、食事の利点ばかりを述べてきましたが、忘れてはならないのは、いいものでも過剰になれば、毒にもなるということです。これは薬と同じです。そういう意味においても、食事は「ゆっくりと効く薬」と呼べるものかもしれません。