担当するのは、2010年4月から同ハイツに勤める神代(こうじろ)さつきさん(35)。介護士とともに日常の食事介助をし、かみ合わせや飲み込み具合、入れ歯の状況を確認する。
神代さんは全国会議で「健康な歯があれば食事を楽しめ、心も体も元気になる。口腔ケアは生きる意欲につながる」と訴えた。会場に持参した寄せ書きには、入所者が書いた「歯合(しあ)わせ」の文字もあった。神代さんは「食事の時の笑顔に接するのが、何よりの幸せ」と手応えを感じている。
認知症などで口を開くことを嫌がっていた入所者も、顔なじみになることで歯を見せてくれるようになった。歯磨きなど日常のケアを重ねることで、どの歯ブラシが適切か相談し合うなど、介護士との連携も深まった。田倉冨美子介護長(55)は「口の細菌が感染を引き起こす誤嚥(ごえん)性肺炎の発症も減った」と効果を強調する。
益田市高津の特別養護老人ホーム「『ますだ』ハイツ」は、歯科衛生士が入所者の歯の健康を管理する「口腔(こうくう)ケア」に取り組んでいる。高齢者施設での歯科衛生士の常勤雇用は先進的で、名古屋市で2月下旬にあった全国老人福祉施設研究会議(全国老人福祉施設協議会主催)での活動報告が奨励賞を受けた。