残った歯に金属のバネ(クラスプ)を引っかけて、人工の歯と義歯床(人工の歯肉)を固定します。バネの代わりに磁石などで固定する方法もあります。歯を数本失った場合でも部分入れ歯は可能で、歯がすべてない場合は、義歯床をあごに密着させる「総入れ歯(総義歯)」となります。
残った歯を削る必要はなく、取り外しが簡単なので洗って清潔を保てます。また、噛み合わせに不具合が生じたときは修理することができます。しかし、ブリッジに比べて噛む力が劣るほか、部分入れ歯の位置によってはバネが目立ち、見た目が気になることがあります。さらに、バネをかけた歯の負担が増えるため、口腔清掃の管理が悪いと、歯周病が進行してその歯の寿命が短くなる場合もありますから要注意です。
あごの骨に金属でできた人工の歯根を埋め込み、それを土台に人工歯を取り付けます。審美性に優れ、顎(あご)の骨にしっかりと固定されているため自分の歯に近い感覚で噛めるのが利点です。また、健康な歯を削る必要もありません。
外科手術が必要で、人工の歯根があごの骨にくっつくまでに3ヵ月から半年ほどかかります。顎(あご)の骨の量や健康状態などによっては、インプラント治療を行えない場合もあります。歯周病がある人は、インプラント治療の前に治しておくことが大切です。しかし、インプラントの根には、歯と違って、セメント質や歯根膜がありません。
インプラントには健康保険が適用されず、医療機関によって異なりますが1本当たり数十万円の治療費がかかります。ブリッジや部分入れ歯は、一般的な材料を用いる場合は健康保険の適用となりますが、健康保険の対象外となる材料や治療法もあるので、歯科医から十分に説明を聞き、納得してから治療を受けるようにしましょう。
また、いずれの方法も治療が終わったら後は安心、というわけにはいきません。人工の歯はう蝕(虫歯)になることはありませんが、自分の歯よりも汚れがつきやすく、ケアを怠っていると健康な歯や歯肉(歯ぐき)にも悪影響が及びます。下記のようなセルフケアとともに、歯科医院での定期的な検診が必要です。
土台となっている歯がう蝕(虫歯)や歯周病になりやすいので、歯ブラシのほかに歯間ブラシも使って、ていねいにプラークを取り除きましょう。バネのかかる部分がう蝕(虫歯)や歯周病になりやすいので注意しましょう。
部分入れ歯は、取り外して普通の歯ブラシで水を流しながら洗います。バネや義歯床も磨き残しのないようにしてください。力を入れてゴシゴシとこすると、部分入れ歯に傷がつき、かえって汚れがつきやすくなるので気をつけましょう。部分入れ歯専用のブラシや洗浄剤も市販されています。
インプラント周囲炎」といって、細菌が繁殖して人工歯根が入っている部分に炎症が起こることがあります。インプラント周囲炎は通常の歯周病より重症化しやすいので、インプラントの付け根は歯間ブラシを使って念入りにケアしましょう。