本来、鼻呼吸で口を閉じているときは舌の先が上顎に軽く触れています。しかし、口呼吸の人は呼吸をしやすいように無意識に舌の位置をずらしたり、常に口を開けていることで舌の位置が下がってしまうことが多いようです。すると歯が舌に押されたり、顎の成長に支障をきたしたりして、歯並びの乱れにつながる恐れがあります。成長期にある子どもの場合は、とくに注意が必要でしょう。
さらに悪いことに、口呼吸中には、重力に対して下顎を安定化させるために、歯を軽く閉じて歯を合わせることになります。しかし、この無意識の口呼吸の持続により、軽く閉じたはずの歯と歯の接触が継続することで、強い過度の噛みしめ(くいしばり)となります。その結果、噛みしめるための筋肉は疲労し、随伴的に、目の疲れ、頭痛、肩こりなどの不定愁訴につながります。
口呼吸の原因として次のようなものが考えられます。
●アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで鼻が詰まっている。
●鼻腔を仕切る鼻中隔(びちゅうかく)が曲がっている(鼻中隔弯曲症:びちゅうかくわんきょくしょう)など、鼻の構造に問題がある。
●いわゆる「のどちんこ」の横にある口蓋扁桃(こうがいへんとう)や、鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)が肥大して気道が狭くなっている。
●前歯が出ていて(上顎前突)、口を閉じにくい。
●口の周りの筋力が低下している。
鼻やのどの病気が原因であれば耳鼻咽喉科、歯並びに問題があれば矯正歯科で治療を受けることで、口呼吸の改善が望めます。
また口呼吸以外にも、加齢やストレス、薬の副作用、糖尿病、腎臓病、シェーグレン症候群(自己免疫疾患の一種)などによって唾液の分泌が減り、口の中が乾くことがあります。まずは医療機関を受診して原因を突き止めましょう。
口呼吸の原因となっている病気の治療が終わったら、意識的に口唇を正しく閉鎖して鼻呼吸をするように心がけましょう。食事の際は口唇を正しく閉じたまま噛むようにします。ガムを噛んで練習するのもよいでしょう。口の周りの筋肉を鍛える器具や訓練の方法を紹介してくれる歯科医院もあるので、かかりつけの歯科医に相談してみてください。