シーラントは、奥歯の溝を物理的に封鎖したり、シーラント材の中に含まれるフッ化物により再石灰化作用を促進するむし歯予防法です。4年以上で約60%のむし歯予防効果が認められ、特にフッ化物応用との併用によりむし歯予防効果はさらに増加します。シーラントはむし歯発症リスクの高い歯に行うと特に有効です。
シーラントは、奥歯の溝をむし歯から予防する方法です。シーラントによるむし歯予防が今日のように効果をあげた背景にはシーラントの材質の改善が大きく寄与しています。奥歯の溝をレジンといわれるプラスチックで物理的に封鎖することで口腔内の環境から遮断する方法、グラスアイオノマーといわれるセメントで奥歯の溝を物理的に封鎖することに加え、シーラント材の中に含まれるフッ化物が再石灰化作用を促進する方法などがあります。
最近は、レジンとグラスアイオノマーの両方の性質を併せ持ったシーラント材も開発されています。むし歯予防効果に関してはすでに多くの調査があります。4年以上で約60%のむし歯予防効果が認められ、特にフッ化物応用との併用によりむし歯予防効果はさらに増加すると報告されています。
なお、一部のレジン系シーラント材に含まれるビスフェノールAの環境ホルモン様作用の危険性が1996年に指摘されました。しかし、その後の研究によって当時危惧されたような危険性は、現在調べうる限りではないとされています。
シーラントをどのような歯に対して行うかは、むし歯発症リスクの判定と密接な関係があります。むし歯発症リスクの高い歯をシーラントの適応とすることは、シーラント処置歯数の絞り込みが可能となり、高いむし歯予防効果も維持できることから経済的にも合理的な方法と考えられます。
むし歯の発症リスクについては主に個体の情報から判断する方法と、歯の情報から判断する方法とに分類することができます。個体を対象とした判定基準には、過去のむし歯経験、生活習慣、唾液の性状、口腔細菌の状況などがあります。また歯を対象とした判定基準には奥歯の溝の形態、萌出状況等があります。
地域歯科保健活動としてフッ化物応用とシーラントを組み合わせることで大きなむし歯予防成果を上げている地域もあります。つまり、保育園や学校でフッ化物洗口を実施するとともに、よりむし歯になりやすいリスクの高い歯を持っている子供には予防勧奨をし、地域の歯科医療機関でシーラントを実施してもらうことを系統的に行っています。